活動グループ紹介

融合研究推進グループ

新規計測開発チーム/健康計測解析チーム

新規計測開発チーム(Scalable-Human)
/ 健康計測解析チーム(Living-Human)
チームリーダー
水野 敬 Mizuno Kei

未病とは、慢性的に疲れている状態。
“疲労”に着目し、病気が起こる前のヒトを調べています。

 日本は、世界が経験したことのない超高齢社会を迎え、医療費の高騰が大きな問題になっています。これまでは病気の人を治療することに重点が置かれていましたが、疾患を発症する前になんとか対策を講じて健康増進を促していく予防医療・ヘルスケアの考え方が、より重要視されるようになってきました。しかし、“未病”と一言でいっても、とても良好な健康状態から、あと一歩で何らかの病気を発症するという状態まで、さまざまな段階があります。今行われている健康診断では、いよいよ病気という段階になってから、あるいは、病気になってから初めて異常が検知されます。なんとかその手前で、病気を予防することができないでしょうか。私たちは、健康科学の観点から、「未病とは、慢性的に疲れている状態」であると捉え、“疲労”をテーマに研究に取り組んでいます。
 実は、日本は“慢性疲労大国”。6ヵ月以上疲労が続いている慢性疲労者は、日本人のおよそ4割にのぼり、「KAROSHI(過労死)」という言葉が英語になって海外に伝わっているほどです。ほかの先進国では慢性疲労の割合は20%程度ですから、日本における疲労の問題は、世界と比べても特に根強く、喫緊の課題になっています。さらに、大人だけでなく、子どもたちも疲れています。アンケート調査で「1ヵ月以上疲れている」と回答した子どもは、小学校高学年で約30%、中学生で40%、高校生になると58%にのぼっています。睡眠不足などの生活習慣が、背景にあると考えられています。  疲労が根深い問題であるがゆえに、日本の疲労研究は、世界でも群を抜いています。私たちは、これまで疲労の研究に取り組んできた知見を活かしながら、人の健康(特に未病の人の状態)を測るための新しい「健康計測」の開発と、その計測をもとにした「健康指標」づくり、さらには、そこで可視化した一人ひとりの健康状態に対して改善をはかる「健康是正介入」を目指し、研究を進めています。

新規計測開発チーム/Scalable-Human

 ヒトの健康度を評価するための新しい計測器や計測方法の確立を目指すチームです。特に、病気を発症する前段階で“疲労”の状態を数値として可視化することに注力しています。
 これまで使われてきたヘルスケア関連計測機器やシステムの改良に加えて、たとえば、ヒトから排出される呼気ガスや皮膚ガスから慢性的に疲れている方の呼気成分のパターンを見つけようという共同研究や、カメラを使った非接触型の計測器の開発など、まったく新しい計測法の開発にも取り組んでいます。しかし、やみくもに計測項目を増やしてしまうと計測にかかるコストや時間が膨らんでしまいます。健康の指標づくりにおいて、どの計測データが重要なのかを見極めながら、簡便かつ高精度に必要なデータを集められる技術の確立を目指しています。

健康計測解析チームと新規計測開発チームの研究は、密接に結びついており、「健康計測開発」「健康指標開発」「健康是正介入」という研究のサイクルを回すことで“個別健康の最大化”を目指しています。

健康計測解析チーム/Living-Human

  • 理化学研究所の融合連携イノベーション推進棟で、健康計測研究を実施。健常者や病気が発症する前段階にある方を対象に、広く参加を募っています。

 新規計測開発チームがつくる新しい計測手法、さらに、既存の計測器も組み合わせて、実際にヒトの状態を計測していくチームです。2017年6月から理化学研究所の施設内において計測研究をスタート。健康な方を対象に、年度内に1,000人のデータ計測を目指し、さらに翌年度は1万人規模の計測データの収集を目指しています。こうして集めたデータをもとに、慢性疲労者のパターンを掴み、ヒトの健康状態を知るための計測指標をしっかりつくっていくことが目標のひとつです。さらに、そこで得られた結果や、疲労の研究で培った知見をもとに、さまざまな企業と連携して、疲労の改善につながる寝具の開発や、住空間と疲労の関係についての研究、抗疲労食事メニューの開発など、あらゆる側面から健康の是正に向けたアプローチを試みています。また、開発した製品が本当に疲労や健康状態の改善につながるのかという科学的根拠を示していくことも、本チームの重要な役割です。